処遇改善加算とは?
処遇改善加算とは、「介護施設や事業所が、職員のキャリアアップの仕組みを作成したり、職場環境の改善を図ることで、報酬として介護職に携わる職員の給与をUPするためのお金を国が支給してくれる」制度です。
介護業界は人手不足が問題となっています。令和3年の厚労省の発表によると、2025年度には約32万人の、2040年度には約69万人の職員が必要すうから不足すると見込まれているそうです。
国はそんな深刻な介護の人材不足を打開するために、介護職のなり手を増やすだけではなく、現在介護職についている人たちの定着率を上げることを目指すこととなりました。
つまり、今いる職員の賃金をUPし、働きやすいやりがいのある職場をつくり、定着率をあげるためにできた制度が「処遇改善加算」です。
厚労省の調査によると、現在、全国の介護事業所の約9割が制度を利用しており、職員のほどんどが制度で給与がUPしています。
ではどのような流れで処遇改善加算の制度を利用していけばいいのでしょうか?
処遇改善加算を受けるまでのステップ
処遇改善加算を受けるまでの流れを簡単に説明すると以下の通りです。
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介護事業所が、キャリアアップや職場環境改善のための計画を作る
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計画の実施する
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実施したことを報告書として、都道府県や市町村へ提出する
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報告書が認められた事業所へ介護報酬としての給与の上乗せ費用が支給される
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事業所は職員に手当を支給し給料がUP
ここで支給される費用は、介護職員に賃金として還元されなければならず、また、事業所は「介護職員処遇改善実績報告書」を提出しなければなりません。
つまり不正はできない仕組みとなっているのです。
処遇改善加算を取得するための条件
国が支給をしてくれる処遇改善加算の制度を申請するためには、算定要件を満たしたうえで、サービス種別ごとに決められた加算率で計算を行う必要があります。
加算の額を決める区分は下記のように区分けされています。
【 介護職員処遇改善加算の区分 】
区分 加算額
加算Ⅰ 月額37,000円相当/介護 職員1人当たり
加算Ⅱ 月額27,000円相当/介護 職員1人当たり
加算Ⅲ 月額15,000円相当/介護 職員1人当たり
上記、加算Ⅰ~Ⅲにはそれぞれ満たさなければならない条件(キャリアパス要件・職場環境等要件)が決まっています。
図の通り、Iが一番条件が多いことがわかりますね。
では、このキャリアパス要件、職場環境要件とは何でしょうか?下記で説明していきます。
キャリアパス要件について
キャリアパス要件とは、職員が自身の経歴や能力に応じてキャリアアップできるよう、賃金体系や労働環境の整備を重視した要件設定です。
具体内容は下記のように①~③で分かれています。
① 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をする
役職や給与体系を明確にし、役職に応じた待遇などを示すような内容を定めること
② 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設ける
職員に合った研修を行い、介護職のスキルアップを図れる仕組みを用意すること
③ 経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設ける
何年勤めたら昇給をするや、資格を取得により昇給する、というような昇給に関する一定の仕組みを用意すること
上記①~③のキャリアパス要件のように、事業所内の制度を定め周知することで、職員自身が役職や給与体系が明確だとキャリアを築くためにどうすればいいのか、役職に就く際の給与はいくらになるのかなど、理解しやすくなりますよね。
また、仕事に対しての将来像などが明確になることで、本人のやる気も上がってくるのではないでしょうか。
職場環境等要件について
職場環境等要件は、賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施を、いくつかの区分に分け、そのうち1つ以上に取り組むという条件です。
キャリアアップをサポートする取り組みや、家庭と仕事の両立を図れる支援、ICTの導入などいくつか区分が分かれています。
また、具体例としては、介護ロボットやリフトを導入などを挙げることができます。
(詳しくはこちら)
処遇改善加算の計算方法
では実際には支給される金額は、どのように決まっていくのでしょうか?
処遇改善加算の見込み額の計算式は下記の通りです。
各事業所の介護報酬(処遇改善加算分を除く)×サービス別の加算率=加算見込み額
※「サービス別の加算率」は、処遇改善加算の加算Ⅰ~Ⅲで、同じⅠを取得しようとしても、サービス種別ごとに加算率が異なってきます。
下記をご参照ください。
処遇改善加算の対象外について
処遇改善加算は、介護職のみを対象としている制度です。
訪問看護や福祉用具貸与、介護予防などで働く人は対象外となります。
対象外の事業所
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・居宅療養管理指導
・居宅介護支援
・介護予防支援
また、ケアマネージャーや生活相談員、事務員、調理師など、直接介護に携わらない職員も対象外です。そのため、法人代表者や施設管理者、サービス管理責任者も加算の対象外となってきます。
処遇改善加算の職員への支払い方
支給をされた処遇改善加算の職員への支給方法は詳しく決まっていません。
事業所によって異なります。なぜなのかといえば、処遇改善加算の目的が、介護職員の待遇を改善することであるため、職員の収入が増えるという目的が達成できるなら手段を問わないということです。
したがって、毎月給与に上乗せして支払うこと、ボーナスとして支払うこと、どちらも可能なのです。
また、上記対象外に記載をしたような人を除いた介護業務を行っている人が対象となるため、雇用形態や資格の有無は問わず、また正社員でなくても、パートや派遣社員の方へも支給が可能です。
支給方法が自由ということで、支給額も定まってはいません。決まっていることは「支給されたお金はすべて職員に還元すること」であるため、支給の采配は事業所に委ねられています。
つまり支給を全くしない職員がいたり、職員によって金額に差をつけることも問題がないのです。
まとめ
以上、処遇改善加算があることで、介護業界の給料は年々徐々に増えてきています。
また、処遇改善加算には上乗せで支給できる「特定処遇改善加算」や「介護職員等ベースアップ等支援加算」があります。
このような処遇改善につながる支給金を正しく使用し、将来性をもってしっかりと働ける業界を作っていきましょう。