処遇改善加算は、法人代表や役員に支給していいのか?
処遇改善加算は、「介護施設や事業所が、職員のキャリアアップの仕組みを作成したり、職場環境の改善を図ることで、報酬として介護職に携わる職員の給与をUPするためのお金を国が支給してくれる」制度です。
現在、介護職に就いている人たちの定着率を上げることを目的としていますが、実際運営をしている中小企業の場合、代表者本人や役員もしっかりと現場で介護職員と共に働いているケースが多いのではないでしょうか?
では、そんな代表者本人や役員という立場の場合、処遇改善加算の支給を受けてもいいのでしょうか?解説していきます。
処遇改善加算はそもそも誰がもらえるの?
そもそも、処遇改善加算の対象者は誰でしょう?
回答は、「 実際に介護の業務を行う介護職員 」です。
また、介護業務を実際に行う介護職員が対象となるため、派遣労働者も処遇改善加算の対象とすることは可能です。支給のためには、支給方法等について派遣元と相談し、さらに介護職員処遇改善計画書や介護職員処遇改善実績報告書について、対象とする派遣労働者を含めて作成することが必要となってきます。
では対象外にあたるのはだれでしょうか?
回答は、「基本的に生活相談員や看護師、栄養士や調理師、事務員など直接介護に携わらない職員」などがあたります。
しかし、生活相談員や看護師、事務員なども介護職員と兼務している場合は処遇改善の対象となってまいります。
※一方で、支給の分配については定まっていないため、支給の対象であっても支給から除外する職員がいても問題はございません。
では、ここからが本題です。
本来は対象外である法人代表者や役員が介護職員と兼務をしていた場合、加算の対象となるのでしょうか?
処遇改善加算は法人代表や役員に支給できるの?
処遇改善加算の基本的な認識は下記となります。
「 処遇改善加算は、基本的に法人代表者、役員は対象にはなりません。」
なぜなら、処遇改善加算はあくまで、介護職員(労働者)の賃金をUPし、働きやすいやりがいのある職場をつくり、定着率をあげるためにできた制度であるからです。
法人代表者や、役員なども支払い可能にすると、労働者に対する加算が少なくなってしまいます。
しかしながら、介護職員と立場を兼務している場合はどうなるのでしょうか?
この場合、
「 兼務役員等への支給を希望する場合、事業所の所属している自治体へご確認 」
をお願いしております。
ここで実際に、各自治体ではどのような回答になっているのか、自治体ホームページ上に掲載されていた一例を記載しましょう。
① Y市回答
給与ではなく役員報酬のみを支給されている場合は加算対象となりませんが、当該役員が介護職員としての勤務実態があり、その労働の対価として支給されている金銭が給与の性質を有している場合は、加算対象となります。ただし、勤務表、雇用契約書等において上記要件を満たしている(労働者性を有している)ことが客観的に判断できるよう関係書類を整備してください。
② I県回答
経営者等であっても、算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、含めることができる。
③ K市回答
当該事業所の介護職員等として従事している場合は対象となるが,その場合は介護職員等の勤務実態があることが客観的に判断できるよう書類を整備しておくこと。
④ F県回答
加算は介護職員の賃金改善を行うことが目的であるため、役員報酬のみを収入としている場合は対象となりません。しかし、介護職員として勤務し、役員報酬とは別に、介護職員としての賃金を得ている場合は当該部分については、加算の対象となります。
⑤ N市回答
訪問介護員として賃金が支給されていれば対象となるため、使用人兼務役員は対象となり得るが法人代表者は対象にはならない。
以上のように兼務の法人代表や役員についての考え方は、自治体の判断に委ねられているのです。
内容を参考材料の1つとしてお考えいただき、どうしても支払いをしたい場合は自治体へ直接問い合わせ、支払う場合の条件をご確認ください。
まとめ
繰り返しとなりますが、処遇改善加算は基本的に法人代表者、役員は対象にはなりません。
もし対象の職員であるか否かをしっかり確認せず、対象として支給をしていた場合、全額返金の指導が入ったケースもあるようです。
今一度、事業所の支給対象者は、支給対象であるか、しっかり確認し申請を行うようにしましょう。