介護タクシー事業者インタビュー|信州民間救急サービス(株)

はじめに

こんにちは、介護タクシー開業サポートの専門家の行政書士の上田です!

2019年になり介護タクシーの開業サポートを始めてから早3年。

ありがたいことに全国の事業者からご依頼をいただき、多数の営業許可を取得してきました。

これから開業を考えている方は「許可を受けても自分はやっていけるのか?」と不安をお持ちのことだと思います。

特に営業面ですよね。

どうすれば集客出来るのか。

許可を受けるまでに何をしておくべきか。

その不安を払拭するための一助となればと思い、既に許可を受けている介護タクシーの営業方法や開業時にしておくべきこと等をインタビューしてきました

ご参考になれば幸いです。

事業所情報

今回は長野県千曲市にある信州民間救急サービス(株)様(以下、敬称略)の代表取締役である坂口さんと、お兄様である取締役の坂口様にインタビューしました。

インタビュー記事の前に信州民間救急サービス(株)のことを箇条書きで紹介します。


・長野県の事業所様

・介護タクシー許可申請、民間救急認定申請のご依頼

・HP経由で当事務所へご依頼

・長野県では民間救急の事例が数少ない

・車体に消防本部の認定事業所とペイントで記載されている

・消防署からも救急車の無駄な出動抑制に期待されている

・医療の必要性の高い患者様が主な想定顧客

・兄弟で起業

・営業開始まで半年くらい時間がかかった

・介護の仕事の経験はない

・開業以前は教習所の教官をしていた

 

介護業界未経験の方がなぜ起業を思い立ったのか。

ぜひインタビューをご確認ください。

インタビュー概要

インタビュー概要を箇条書きでまとめました。

・介護タクシーを開業するきっかけ

・専門家に頼むメリット

・民間救急車両の購入時の注意点

・市民への認知を広める工夫

・初めての搬送を終えて

 

救急車両を使った介護タクシー開業までのみちのり

(坂口様ご兄弟と実際に使っている救急車両)



上田:本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 

坂口様(お2人):よろしくお願いします。

 

上田:早速ですが率直にお聞きします。なぜ今回民間救急事業を開業しようと考えられたのですか?

 

坂口代表:理由は大きく2つあります。

1つ目は緊急性もないのに救急車を利用する方が一定数いるということです。少しでも無駄な救急をへらし、本当に必要な方に向けて救急車が出動する手助けになればと思い決断しました。

2つ目は家族です。

義理の父が以前(昨年5月逝去)福祉施設でお世話になっており、施設が提供する日帰り旅行がありました。その旅行は健常者である家族の付きそいが必要でした。私達が多忙で日帰り旅行を断らざるを得ないことがありました。

そのときの義父の残念そうな表情がなんとも印象的で。旅行を行けるときに自分たちのタイミングで行けるサービスは必要だなと思いました。

要介護度が高い利用者さんでも安心して外出出来る消防救急をやるんだと決心しました。

これららが開業を決意した理由です。

 

上田:民間救急を立ち上げて既存の介護タクシーではカバー仕切れない部分を補い、社会貢献をされたいうということですね。

坂口代表:おっしゃるとおりです。

専門的な知識を借りたことで開業前の不安が軽く

(坂口代表)

 

上田:前職は介護タクシーとは関係のない運転教習官をやられていました。新たな業界未経験の事業を始めることに不安は感じませんでしたか?

 

坂口代表:それはもちろんあります。

まずは会社の立ち上げ、そして福祉車両の購入、一般乗用旅客事業の許可申請。全てが初めてのことです。

介護タクシーサービスそのものより法務手続きといった部分がすごく不安でした。そこで専門の先生方にお願いいたしました。

 

上田:会社設立後、実際に営業を始めるまで7か月ほどかかりました。その間、何を思いましたか?

 

坂口代表:悶々としていました(笑)

主には車両関係です。私が目指していたのが本格的な民間救急ということで、一般的な介護タクシーとは異なる特殊なケースでした。役所や車両販売店もあまり対応したことないからかスムーズに進みませんでした。

あとは運賃料金の認可が下りるまでの時間がかかったのが少し辛く感じました。(長野県は営業許可を取得後、運賃の認可申請が必要。よって許可申請から5ヶ月程度営業ができない)

 

(お兄様の坂口様 取締役)

上田:ありがとうございます。

次に兄で取締役の坂口様へ質問させていただきます。今回は実の弟が代表になり独立をする際に自分も一緒にこの仕事をしようと思われたきっかけは何でしょうか?

 

取締役:そうですね、私が今までやっていた仕事が交通警備員でした。

60~70歳と高齢になっても続けていけるような仕事ではなかったので、せっかく弟が始めるなら、少しでも後押ししたいと思い独立を決心しました。

 

上田:弟さんの掲げる企業理念にも深く共感されたということも大きかったですか。

 

取締役:はい。そうですね。

 

上田:先ほど代表の坂口代表にも伺ったのですが実際事業が開始するまでここが不安だったなという点はなんですか。

 

取締役:代表ほど大変な思いをしていないので僕が言うのは少しおこがましいです。(笑)

敢えて言うのであれば未経験な業種なので手際よく出来ればいいなと思っています。今は日々勉強中です!(インタビュー当時、営業開始して1ヶ月程度しか経っていなかった)

 

千曲市民に認知してもらうためのひと工夫

(実際に使用している救急車両)

 

上田:今坂口代表から初めてお電話頂いた際、介護タクシーではなく民間救急でやるんだと強い意志を感じました。

あわせて千曲市に対し強い愛着があるように感じます。

そこで千曲市の民間救急事業をしていくにあたり市民の皆さんに認知していただくためには何か意識したことはありますか。

 

坂口代表:車体の外観です。

今現在千曲市には民間救急が2社あります。そのうち1社は普通のワゴン車に社名が書いてあるくらいで、介護タクシーと区別が中々つかないのではと感じました。

そこで弊社では消防本部の協力を経て人々の目につきやすい救急車をベースにした車両を使うことにし市民への認知度を高めようしています。

救急車っぽいけど救急車じゃないなーというんでしょうか。(笑)

 

上田:東京の認定基準ですと救急車と誤認をしてしまう危険性のある車体は認定が下りない傾向にあります。

今回の場合は消防本部の方が協力してくださり

「救急車っぽいデザインでもいいよ。」

ということですよね。

ここだけの話、千曲市消防の方でも救急車っぽいデザインにしてもらいたいという意向のようなものは感じられましたか?

 

坂口代表:さすがにそういうことは相手も立場上は言えないでしょうが(笑)救急車の適正利用を拡めていきたい意向は強く感じました。

救急車の後面ガラスに救急車の適正利用を促すステッカーが貼られています。つまりあまり緊急性がないの119番通報する方が多いわけです。

例えば鼻血が出たから救急車を呼ぶとか、もっと酷い例だと「次の日の〇時〇分に迎えに来てください」だとかそういった要請もあると耳にしています。

その中で消防救急と似せたカラーリングの車両を使うことによって消防車ではない民間救急の認知度を高められればと思います。

 

上田:消防署に車体を救急車っぽくしたいと伝えた時にはなんて言われました?

 

坂口代表:まず救急車っぽくてもいいか本部に確認してもらい、認定基準を守りつつ「この色はこうしてほしい」という指導を受けました。


上田:
救急車両に似たカラーリングはもちろんですが、ペイントで車両に”千曲市認定”と書かれていることもすごいことだと思います。


消防救急車両を購入時に気を付けるべきポイント

(実際の車内の写真)

 

上田:僕自身が開業サポートをしてて感じることは介護タクシーと民間救急の違いが認識されていないと思うことが多々あります。特に車両販売店。

 

実際、坂口代表も最初のほうは救急車両を購入することから始めましたが、販売店と関わる、もしくは車を購入するに当たって知っておくとよいことや、こういうところを見た方がいい等のポイントはありますか?

 

坂口代表:消防救急の車両というのはオークションで出ていますし、専門的に買い取っている業者があります。

専門業者に直接訪問して車両を見て、良いと思えば買う。

単純ですがこれが一番いいと思います。


売る側としては民間救急として使える車両ですと謳っているので照合や消防本部の名前というのは当然ペイントで消されていますから特に手を患うことなくそのまま購入することはできます。

 

ただし購入の際は地域の運輸支局などで確認をしっかりとってください。車検証を持っていき窓口で確認が必要です。

 

上田:確かにそうですね。正直、今回は審査段階で揉めた部分もありました。

一番印象的だったことは、車体の形状が救急車だと医療系機関が購入する場合でないと検査は下りませんが、運輸局では営業許可を出すという二重構造です。

審査ではOK、検査登録ではNGを車両販売店の人がご存じなかったので折衝が大変でしたもんね。車体の形状変更責任はどちらにあるのか不明瞭な契約でした。

実際の現場で感じた改善点は・・・

(実務中の写真)

 

上田:では再びお兄様にも質問を。

先日初めての搬送を終えて、警備員とは違う仕事内容を肌身で感じられたと思います。何か「ここをもう少しこうしていれば」または「これをやっていたらもう少し楽だった」というような点。率直にいかがでしたでしょうか?

 

取締役:やってみなければわからない、どうしても予測できないことは起こりうる。警備員でもそうでしたし、それが現場なのでやっておけばよかったということは特には思い浮かびません。

ただ、搬送を実際に経験したことで段取りや装備において自分の予想よりも使用頻度が多く減りが多かったです。

2回目の搬送に活かしていきます。

 

上田:まだ民間救急というのはモデルケースが少ないので「何をしておくのがいいのか」「何を準備しておくべきなのか」がそもそもわからないことって有るのかなと思います

もちろん講習や備品の認定基準を満たせているので安全であることは言えるでしょう。ただ他の事業所さんにお話を聞いてもいくら事前に調べて備えていても想定外のことがあると。そういうことを経験して乗り切る適応力が大事なんだと思います。

 

さいごに

(にこやかなお二人 左 坂口代表 右 坂口取締役 )

 

上田:最後になりますが、今後の意気込みを教えていただければと思います。

 

取締役:今後2人だけで事業を背負った状態でいくとオーバーフローしてしまうと思うので車両と従業員を増やし、お客様の希望を取りこぼさずちゃんと答えられるような体制をとっていきたいと思います。

 

上田:雇用を生む地域貢献ですね。

 

取締役:そうですね。

ただ多く車両を持ちすぎても管理ができなくなってしまうので、希望としては3~4台に増やしてお客様を満足させていきたいなと考えています。

 

上田:わかりました、ありがとうございます。ではご代表よろしくお願いいたします。

 

坂口代表:消防からの声掛けもあり当社のニーズは強く感じています。兄も言っていますが将来的には車両や人員を増やすことを考えています。

ただし実績はまだ1件だけです。いったん半年事業をしてみてどんな数字が出るか、次に1年後どんな数字が出るかを見たうえ判断したいと思っております。

 

上田:本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

 

おまけの写真

(お蕎麦屋さんにて 左 坂口代表 右 上田)

(美味しすぎた信州そば)

(お土産に日本酒いただきました)

 

行政書士 上田 貴俊